※ 2014/11/30 追記: ブラウザ上で図面を引いてスポーク長を計算できる計算機を作りました。こちらから。

今回中華カーボンを組むにあたって、CADでスポーク長計算をしたところうまくいきまくりだったのでご紹介。
元々なんでこんなことしようかと思ったかというと、たまたま手に入ったNOVATECハブのフランジ穴配置が特殊だったからですね。

一般的でないハブのフランジ穴配置やリムの穴配置でも、線さえ引けば計算できるし、
組みあがりのイメージ画像も同時に出来るから割といいんでないかと思いまして紹介します。

まず使うCADソフト。
フリーのを探したらJw_cadがメジャーっぽかったのでこれを使用してます。
のでJw_cadの画面で説明していきます。

■ ハブの採寸

まずハブの寸法とかを測ります。
といっても必要なのは
・フランジ穴のPCD(Pitch Circle Diameter: 穴の並んでいる円の直径)
・ハブの中心からフランジまでの距離
・フランジ穴の角度間隔
だけです!
が、これが直接仕様書に書かれていない場合もあるので、そういう場合は実測したり計算したりして求めてください。

たまたま以前書いた図面があるのでFH-5700で説明しましょう。

fh5700-1

「ハブの中心からフランジまでの距離」は、上の図で言う 37.35 と 20.55 の二つです。
リアハブはフリー部分の分だけ寄るので均等ではなくなります。
フロントハブでは同じになります。(多分)
またこの寸法はシマノのサイトに載ってます。

fh5700-2


「フランジ穴のPCD」と「フランジ穴の角度間隔」が上図です。
PCDは直径なので上図で言うと45mmになります。
角度間隔については、普通のハブであれば360÷穴の数で求められます。
上図では片側のフランジ穴しか書いていませんが、反対側のフランジにも穴が開いており、角度は半分(11度15分)ずれています。

■ リムの採寸

リムに関してはERD(有効リム径)と穴の角度間隔だけでOKです。
穴の角度については、変則的な配置になってなければ360÷穴数で求められます。
ここでは OPEN PRO 32H を想定してERD602mmでやってみましょう。
ERDが分からない場合はリムの内径を実測して、リムの厚み×2を足して算出しても良いです。
ちなみにリムのERDはニップルが接触する面の直径らしいです。

■ 図面を引く

ここまではCADを使わない場合でも必要なことでしたが。
あとは、なんていうか、このデータを元に図面を引くだけなのです…。

レイヤーの分け方ですが、
・リムとハブの外形
・補助線
・スポーク
くらいに分けておくといい感じです。

まずはリムとハブを描きましょう。

適当に点を置いて中心点とします。この点を中心に…
ハブのPCDを直径とする補助線を引きます。(Jw_cadで入力するのは半径なので注意)
リムのERDを直径とする補助線を引きます。

これだけだと、見た面にホイールっぽくなくてつまらないので…
・半径2.5mmの円(クイックの穴)
・半径5mmの円(ハブシャフト)
・半径9.5mmの円(ロックナット)
・フランジ外径の円(FH-5700なら半径27mm)
・半径334mmの円(タイヤ外周)
・半径312mmの円(リム外周)
・半径312-リムハイトの円(リム内周)
なんかをお好みで書き足してください。(なくてももちろんおk)

こんなんなります。

openpro1

黒を外形レイヤ、水色を補助線レイヤに描いています。

次にスポークの補助線を描いていきます。
今回の例ではハブもリムも変則的な配置になっていない32Hの普通のハブとリムですから、360÷32=11.25度ごとにハブの中心から補助線を引けばOKです。
右と左が分かりやすくなるので、色を交互に変えるのがいいかも。

openpro2

こうなります。
変則的な穴配置のハブやリムの場合は工夫して引いてください。
またこの時点で、今引いた放射状の補助線とハブのPCDの円の交点がフランジ穴の中心になってますから、ここにフランジ穴を描いておいても良いです。

あとはスポークを描くだけです。

■ スポークの組み方

今回私も間違ったのですが…組み方。

日本式呼称外国式呼称
ラジアル組ラジアル組(0クロス)
2本取り1クロス
4本取り2クロス
6本取り3クロス

2本取りは普通やらないようですが一応。
よく見る説明は、6本取りは6本隣のスポーク同士が交差するんだよ!というやつ。
しかし交差した先はどこの穴に入るのか、というのはあんまりしっかり書かれてなかったり。
これは、隣同士のリムの穴に入るのが正解です。隣同士と言っても実際すぐ隣の穴は逆のフランジから来たスポークが入るところなので二つ隣ですけど。

↓ ラジアル組
openpro-radial

↓ 1クロス、2本取り
openpro-1cross

1箇所で交差していて、ハブ側では2個離れた穴から出たスポークが交差してるってことです。

↓ 3クロス、6本取り
openpro-3cross

ハブ側では6個離れた穴から出たスポークが交差して、リムの隣同士の穴に入ります。
これを全周に渡って組むと…

openpro-3cross2

1本のスポークはほかのスポーク3本と交差するので3クロスと呼ばれます。

というわけで、フリー側6本取り、反フリー側ラジアルでスポークを描いて行くと、こんな感じに。

openpro3

ラジアルのスポークを1本おきに間引くとG3もどきになりますね。

■ 実際のスポーク長の算出

あとは「線長」ボタンを押してスポークの線をクリックすればスポーク長が…
と言いたいところですが、これは平面図なので実際のスポーク長より短いです。

別の方向から見た図ではこうなります。

openpro4
左端のコの字はリムだと思ってw

今までの図で描いたスポークは、この図で言う青い線の部分です。
実際のスポーク長は、この図で言う赤い線の部分です。
緑色の線の部分は、最初にハブの採寸で測った「ハブの中心からフランジまでの距離」です。
で、今分からないのは実際のスポーク長ですが、これは三平方の定理で出せますね、と。

図面のスポーク長の2乗と、ハブの中心からフランジまでの距離の2乗を足した値の平方根になります。

これだけ。

試しにここまでで書いた図面のスポークの長さを見てみると…

フリー側(6本取り):293.13mm
反フリー側(ラジアル):278.5mm

で、これが図面のスポーク長なので三平方の定理で実際のスポーク長に直すと…

フリー側: sqrt(293.13^2+20.55^2)=293.85
反フリー側: sqrt(278.5^2+37.35^2)=280.99

となりました。
おちょこ分があるので反フリー側のほうが普通は長くなりますが、ラジアルなので逆に短くなってます。
ちなみにサピムのスポーク長計算機に同じ条件を入れて計算してみると…

sapim

ほとんど同じです。

変則的な組み方や穴パターンでも、CAD上で正確な図面引いてやれば寸法が出せるので柔軟性は高いと思いますよ!

追記:
スポークがニップルに埋まる分とか、フランジ穴の中心からスポークの肩までの距離とか考慮してませんが、これで大体いけるみたいです。
スポークの肩の分は、厳密には1mm弱くらい伸ばす必要がある気がします。
また、ニップルの方に関してはニップルがリムと接する所からスポーク末端までの1mmくらいを伸ばしてもいいのかもしれません。(伸ばさなくても十分ニップルにスポークは食い込む)
なので、まあ発注するときにピッタリのサイズが無かったら長いほうを頼むくらいでいいんではないでしょうか。

追記2:
ハブやらリムやらの寸法はできるだけ正確に測るべきですが、あんまり気にしすぎても大変な気がします。
なので、影響が大きいもの・小さいものを把握しておくといいかも。
リムのERDやハブのPCDはほぼスポーク長に直結してきます。ラジアル組では特に。
逆に、ハブの中心からフランジまでの距離なんかは、あんまり影響しません。
フリー側のスポーク長を図面長から実際の長さに変換しても0.72mmしか変わっていない事からも、それが分かるかと思います。
「ハブの中心からフランジまでの距離って、フランジの外側?内側?」とか考えたりもしましたが、どっちでもスポーク長には影響ないんじゃね?とか今は思ってます。
(厳密には非ラジアルの場合フランジの外側から出るスポークも内側から出るスポークもあるので真ん中が正解かと思ってますが)
スポークがそもそも2mm単位でしか売ってなかったりするんだから、2mm以下の誤差はあってもなくても大差ないのかもしれませんよ。